2006.06.18
担当:tr
(上の巻の復習)
増税のロジック
@わが国の財政は破綻に瀕している
↓
A今後予想される高齢化社会では、社会保障費
の増大が見込まれ、歳入の増大がなければ、
国家財政の破綻は回避できない
↓
Bわが国の国民負担率は先進諸国の中では低い
↓
Cわが国の消費税率は先進諸国の中では低い
D租税に占める個人所得税の割合も低い、これは
給与所得者が様々な所得控除に恵まれているから
である
↓
○結論として、消費税率のアップ、給与所得者の諸
控除の廃止などの増税が必要になる
ウソ
Bわが国の国民負担率は先進諸国の中では低い
というのはウソである。
A社会保障費の増大はにより、歳入を増大しないと
国家財政の破綻は回避できない
というのはウソである。
(ここから中の巻です)
3.増税ロジックのウソ(承前)
《その3》
Cわが国の消費税率は先進諸国の中では低い
D租税に占める個人所得税の割合も低い、これは
給与所得者が様々な所得控除に恵まれているから
である
というのもウソです。
消費税率を上げる、低所得層への所得税課税を強化するというのは、
租税の持つ『富の再配分効果』に逆行する(これを税の逆進性と言い
ます)政策です。
まず消費税で見ると、消費税率が高い国として常に引き合いに出さ
れるスウェーデンは確かに25%ですが、日本と違うのは一律25%では
なく、複数税率が採用され、その最高税率が25%だということです。
具体的には、税率は対象外(非課税)、6%、12%、25%の4種類
で、
非課税:医療、文化活動など
6%:新聞、書籍、雑誌、公共交通など
12%:食料品など
25%:その他
となっており、25%に該当する品目は多くても、税の逆進性を緩和し
ようという意図は感じられると思います。例えば、トマトをマーケッ
トで買えば12%、レストランで食べれば25%となります。
他の国については調べていませんが、同じように複数税率の国や、
高齢者・年金生活者には還付制度がある国など、いずれも税の逆進性
緩和策です。
そこに配慮しないで、日本の5%は低い、というのは限りなくウソ
に近いと言わざるをえません。
また、売上高1,000万円未満の事業者の納付免除や、簡易計算制度
による益税など、税の名目で徴収しても国庫へ納付しなくてよい、な
どの不透明部分が付きまとうのも日本の消費税の特徴といえます。
消費税の議論でもう一つ重要なのは、土地取引に対する課税です。
ご承知の方も多いと思いますが、土地の売買では消費税は非課税です。消費
する
ものではないから、というのがその理由のようですが、実は別途
不動産取得税というものがあります。これは地方税で、税率は3〜4%
ですが、いろいろな控除制度があります。
我が国では戦後一貫して『持ち家優遇税制』が行なわれてきました。
土地は我が国で最も希少な資源であるにもかかわらず、その所有が奨
励され優遇されてきたのです。
希少な商品は常に投機の対象となります。それを回避しようとする
なら、需要を抑制する制度整備が必要となりますが、これに逆行して
きました。
今後消費税が10%〜15%くらいまでは増大するとしても、土地とい
う取引に関しては据え置きなのでしょうか。家は所有しているが、毎
日食べるもの・着るものに困窮する、というような生活が皆さん本当
にお望みなのかどうか、考えて欲しいと思います。
次に所得税ですが、低所得者からも所得税を取ろうというのが国の
政策であるなら、それはそれで一つの考え方でしょうが、現在叫ばれ
ているのは、低所得の会社員を決め打ちしたものです。自営業者や農
業・漁業従事者はどうなのでしょうか。
また、所得税が国際的にも低いという例示として引き合いに出され
るデータに次のようなものがあります。

財務省資料
『B国民負担率が低い』はウソ、というところで見たように、この
国際比較自体、租税だけの比較ですから、あまり意味がありません。
たとえば、被雇用者の社会保障費(税)は、スウェーデンでは100%
雇用者負担なのに対し日本は労使折半ですから、上記のグラフの外で、
個人負担分は既に日本の方が重いのです。
国民所得に占める個人所得税の比率が図中で6.0%、日本は最低だ
という話では、増税のロジックは成立しません。
さらに、所得別の実効所得税率の国際比較をしてみましょう。
データの出所は同じく財務省です。

財務省資料
この図によれば、日本では現状で既にイギリスやドイツより低所得層
が課税されていることがわかります。
また、1,000万円を超える所得層では、アメリカと比べた税率の低
さはさらに広がり、3,000万円のところでは、アメリカについて2番
目に低い所得税率になっています。
個人所得税の租税負担率が低いから低所得層から取る、というのは、
そのロジックすら実体と異なるだけでなく、『高所得層は温存』とい
う点でも説得力がありません。
4.税制の持つ富の再配分機能
増税のロジックがどれほどでたらめか、という話はこのくらいにし
て、次に今進行中のことが実はどんな結果になるのか、を展望してみ
ましょう。
税制とは『だれからとってだれに与えるか』ということですから、
社会構造全体に大きな影響を与えます。財政再建のために取り易い人
から取る、『しかたがない』『やむを得ない』といった発想では国の
将来を誤ることになります。
4-1 だれから取るか
すでに結論を言ってしまいましたが、今の増税論は『取り易い人、
文句を言わない人、選挙の票に影響しない人』すなわち、給与所得者、
中でも中低所得層から取る、ということなのは間違いありません。そ
の結果は、アメリカのように中産階級が二極分化し、貧者と富者だけ
の国になるということでしょうか。
中低所得の給与所得者というのは、自分で稼いだ収入をすべて支出
にまわし、あるいはローンなどの借金を返している人々、およびかつ
てそうだった人々で、富が社会に循環するというる経済循環に最も寄
してきた人々です。
これに対して、富裕層が豊かな分で買うものといえば、海外高級ブ
ランド、外国製自動車、外国の別荘など、富を海外に放出してしまう
ものや、土地や美術・骨董品など、フローではなくストックになって
しまうものです。富者を税制で優遇しても経済循環への寄与は逓減し
てしまうと言えます。
一ころ、稼ぐ人はそれだけ優秀なのであり、彼らの税負担を重くす
れば、かれらは海外に流出してしまう、という議論がありました。ア
メリカなどは、これを地で行っている国です。しかし、日本ではどう
でしょうか。
日本は、いつまでたっても後進に身を譲らない人々に溢れています
から、そんな心配はないですよね。また、税負担が重いから海外に行
ってしまうという人は、つまり、国に貢献する気がないのだから、ど
んどん出て行ってもらったほうがよいでしょう。
つまり、富裕層を優遇する税制を叫ぶのは富裕層だけです。まして、
取り易く文句を言わない給与所得者を狙え、となれば社会が歪んでし
まうのは目に見えていると思いませんか。
4-2 だれに与えるか
先に国民負担率の国際比較がありました。それでは、国民還元率と
いう国際比較もしてみましょう。

この図は1999年の厚生白書に掲載されていたものです。データが古
いのはなぜかというと、その後国立社会保障・人口問題研究所の統計
には掲載されなくなってしまったからです。同研究所のホームページ
を開いていただくと、最新データはユーロスタットという欧州の統計
に直接リンクされています。
なぜ出なくなってしまったのか、勘ぐっても意味ありませんが、日
本が還元率が低いのは一目瞭然で、増税のロジックにとって都合が悪
いデータであることは間違いありません。
しかも、負担率の方は見かけより実は大きいことは前に述べました。
社会保障費が増大するので増税が必要だと言っておきながら、そこ
への還元は実は低い、とするなら、我が国の租税・社会保障費は、い
ったい何に使われているのでしょうか。
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