2006.06.04
担当:tr
今回は情報提供にとどまらず、『意思表示』をさせていただきたいと
思います。増税に反対します。
今主張されている増税のロジックには、いたるところにウソがありま
す。最大の標的になっている会社員の皆さんの中には、とても従順で
物分りがよく、「増税もしかたがない」と思っている方が多いようで
すが、ちゃんと実態を把握されているのでしょうか。
増税ロジックのウソはそれほど分かり難いものではなく、マスコミも
知っているはずなのですが、きちんと情報提供してくれていません。
わずかに、官の無駄使いを面白おかしく取り上げるバラエティ番組が
散見されるに過ぎない、その理由を憶測しても無意味ですが、民主主
義の守護神たるマスコミがその使命を果たしていないことに、薄ら寒
いものを感じます。
会社員の皆さん、『物分りがいい』にも限度があります。従順な国民
を犬死の道へ引きづり込ん行ったこの国の歴史を思い出しましょう。
1.増税のロジック
現在、政・官・学が力をあわせて大合唱している『増税!』のロジッ
クはこうです。
@わが国の財政は破綻に瀕している
↓
A今後予想される高齢化社会では、社会保障費
の増大が見込まれ、歳入の増大がなければ、
国家財政の破綻は回避できない
↓
Bわが国の国民負担率は先進諸国の中では低い
↓
Cわが国の消費税率は先進諸国の中では低い
D租税に占める個人所得税の割合も低い、これは
給与所得者が様々な所得控除に恵まれているから
である
↓
○結論として、消費税率のアップ、給与所得者の諸
控除の廃止などの増税が必要になる
これらのロジックのうち、ウソではないのは
@わが国の財政は破綻に瀕している
というところだけです。これについては『官発信』の宣伝にいやとい
うほど登場しますので、説明を省略します。
問題は、これだけの借金を誰が何のために使ったのかをまず明らかに
することだと思います。それをあいまいにしたままでは、同じような
借金作りがいつまでたっても改まらない可能性があるからです。
そこでまず、国家の予算のことを見てみましょう。
2.国家予算の真実
国家予算は約82兆円(2005年度)、その内訳は、
社会保障費 21兆円
公共事業 7兆円
文教・科学振興 5兆円
防衛 5兆円
その他 9兆円
地方交付金等 15兆円
国債費 19兆円
これが、国の『一般会計』といわれるものです。ところが、官の予算
にはあと2つあって、1つは『特別会計』、もう1つは『地方財政
計画』と言われています。
特別会計は特定の目的のために特定の財源をあてて運営しているもの
で、言わば固有の収支計画を持っている予算です。現在31の『勘定』
があります。
地方財政計画とは自治体の予算のことで、特別会計と同じように特定
の地方のために特定の財源(地方税など)をあてて固有の収支計画を
立てて運営している予算で、都道府県・市町村併せて3,000ほどの『勘
定』に分かれます。
一般会計に現われる社会保障費、公共事業費、地方交付金などは、こ
れら特別会計・地方財政計画の赤字部分が計上されているわけです。
ですから、国の歳出の問題を考える時には、一般会計を云々してもあ
まり意味がなく、そこに出てくる赤字の元になった特別会計・地方財
政計画にメスを入れる必要があります。
では、これら2つの会計の規模ですが、
特別会計 412兆円
地方財政計画 84兆円
ほどになり、一般会計と単純に合計すると578兆円となります。
ただし、例えば一般会計の地方交付金15兆円のように、一般・特別・
地方の各会計間のやりとりや、会計の中の勘定間のやりとりは、単純
合計では二重にカウントしてしまいますので、これらのやりとりを除
かなければなりません。
二重分を修正した、一般・特別・地方の合計、すなわち『官の支出』
は約300兆円と推計されます。
支出(歳出)が300兆円なら、収入(歳入)も当然300兆円あるわけで
すが、歳入の全てが租税と社会保障負担の収入でまかなわれているわ
けではありません。そこで借金ということになります。
借金としては国債が30兆円、財政投融資などからの借入金が35兆円、
地方債などが15兆円(ラフな推測)、計80兆円あまりになります。
したがって、300兆円使うにあたり、借金ではない収入は220兆円しか
なく、残りの80兆円は借金しているわけです。
3.増税ロジックのウソ
《その1》
前項の『借金以外の収入は220兆円』から、すでにウソが一つ出てき
ました。それは、
Bわが国の国民負担率は先進諸国の中では低い
というところです。
この主張のために必ず出てくる国際比較は次のようなものです。

出所:財務省HP
これによれば、日本の国民負担率は37.7%。
しかしながら、『借金以外の歳入』=220兆円からすれば、2005年度の
国民所得は377兆円ですから、国民負担率は65.3%で、スウェーデン以
外のどの諸国よりも重い負担、という数字になります。
さらに、財政赤字分を盛り込んだ潜在的国民負担率は300兆円/377兆円
で、79.6%、スエーデンを抜いて断然トップです。
この数字は本当なのか、分子/分母に間違いがあるのか、官が正しい
数字を示してくれないので、判定はを留保するしかありません。
国際統計というのは、一律に比較できないことが多く、それを示す時
には、詳しく解説するのは常識中の常識です。
特に、税制に関する比較は、税制度というものが各国の国内問題であ
るため、国際共通語で詳しく海外に紹介されることがないので、例え
ばスウェーデンと日本を比較する場合、スエーデン語と日本語に堪能
な財政・税制の専門家でなければ、そう簡単に比較できません。
こういう国際比較を安直に持ち出すことが間違いであり、それを承知
でロジックに使っているとすれば、意図的なウソということになるで
しょう。
わが国の国民負担は先進諸国より軽いなどと信じてはいけません。
このグラフのもう一つのウソは、『負担率に対して還元率はどうなの
か』という点に言及しないところです。これについては後述します。
《その2》
順が前後してしまいましたが、2つ目のウソは、
A今後予想される高齢化社会では、社会保障費の増大が
見込まれ、歳入の増大がなければ、国家財政の破綻は
回避できない
というところです。
社会保障費の中心は老齢年金と医療費ですが、これらが増大するとな
ぜ即増税になってしまうのでしょうか。それはウソです。
まず、社会保障費の中心部分である国民年金・厚生年金を見てみまし
ょう。
社会保険庁をはじめとする行政の情報欄を開くと、最初に必ず出てく
るのが『わが国の年金は世代間扶養(すなわち現役世代の保険料でリ
タイア世代の給付を支える仕組み)です』という制度論です。
つまり、徴収する年金保険料から年金給付を行って『入り』が『出』
よりマイナスなら赤字、したがって税金でこれを穴埋めする。
しかし、なぜこんなことに固執しなければならないのでしょうか。
年金収支はずっと黒字で推移してきました。その結果、現在の年金積
み立て残高は下記のとおり150兆円ほどあります。
年金積立金の運用実績(概要)
厚生労働省年金局
厚生年金、国民年金積立金運用ホームページ
この150兆円を温存したまま、単年度収支のマイナスは税金で補う、そ
して税収が少ないから借金が膨らみ、財政破綻寸前だ、これは変です
よね。財政破綻を叫ぶ前にストックを取り崩すのが先でしょう、円が
破綻したら150兆円の積立金もパーなんですから。
平成17年度の国民年金・厚生年金の保険料収入(入)と年金給付額(出)
は次のようになっています。
『入』と『出』はいまだそれほどひどいアンバランスになっていると
は言えないことがお分かりと思います。
したがって、
@これが今後赤字化するとしても、それを財政破綻に結び付けて増税
のロジックに結びつける前にストックを取り崩すのが先
Aこれ以外のところで大赤字というなら、それを『当然の権利として
の老齢年金』の問題にするのはすり替えで、福祉政策の方に問題が
ある
ということでしょう。
さらに言えば、先の赤字化が見えているからこそ、年金保険料のアッ
プや給付年齢の先延ばしをしたはずです。
ストック150兆円分を温存し、年金会計が赤字だから一般会計の歳出
が増える、だから増税、というのはもうムチャクチャな話であること
は明らかです。
次に医療費。ここでのウソの中心は歳出の方ですが、コストダウンの
努力については後述しますので、ここでは次の点だけ指摘しておきま
しょう。
○先進諸国の中では日本の国民負担率が低いというのはウソでした。
○ウソのダシに使われた国の一つ、スウェーデンではしかし、医療は
無料です(無料にするのが良いのかどうかは別問題)。
つまり、日本は、医療の本人負担分は重く、国民負担率もさらに重く、
という政策が進行中ということです。
つづく
《中の巻予告》
『日本の消費税率は低い』のウソ
『低所得層の所得税率は低い』のウソ
税制の持つ『富の再配分機能』とは。
歳出の無駄を省けば、財政破綻の心配など雲散霧消する。
この記事にお便りを。

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