2007.09.01
担当:tr
格差社会《中》の「所得格差」の項で、2005年版の『所得再分配調査報告書』がとっくに出ていなければならないのに出ていない、と申しあげました。参議院選挙のあとに出てくるのだろうな、と予測していたところ、その予測どおり2007年8月に公表されました。ということは与党にとっては都合の悪い数字だったということです。
この調査報告書よると、所得格差の物指であるジニ係数は、次のとおりになっています。

そして、報告書では、2005年は『所得再分配によるジニ係数改善度は、26.4%で過去最高』と述べています。まるで所得格差の是正が進んでいるかのような言い方です。
所得の再分配政策は時の政府の重大テーマですから、現政府は所得格差の低減を政策にしているようにも聞こえます。
果たしてそうなのか検証してみましょう。
検証1:ジニ係数の改善はもっぱら社会保障によるもの
※1の社会保障による改善度と※2の税による改善度をご覧いただければ一目瞭然です。『ジニ係数上昇の要因の一つは高齢化』ですから、当初所得におけるジニ係数に対して、社会保険料を納める人が減り、年金給付を受ける人が増える、という再分配でジニ係数が改善するのは当たり前です。先に払っていたものを返してもらっているだけ、と言いたくなる方も多いでしょう。政策によって格差が改善したわけでもなんでもないですよね。
むしろ、現政権が行っている政策は保険料を上げる一方で、給付を下げるということですから、給付を下げる効果が出始めたらどうなるか、見守りたいところです。
また、高齢化が効いている部分と、保険料アップ給付ダウンが効く部分をしっかり見極めていくことが今後必要になるだろうと思います。
検証2:税によるジニ係数の改善度はむしろ低下
1999年の数字を除けば、税によるジニ係数の改善度はむしろ低減し続けていることがわかります。高齢化以外の要因、特に若年層における所得格差については、これを改善するのは税によるところが大きいはずで、その部分の状況は悪化している、と言えそうです。
検証3:格差は拡大している
改善効果は過去最高かもしれませんが、ジニ係数はそれでも悪化していることを見落としてはならないでしょう。当初所得@にしても、可処分所得Bにしても、じりじりと格差は広がっている。2005年の調査結果は2006年夏には出てしかるべきでしたが、それを丸々1年参議院選挙後まで遅らせた都合の悪さ、というのは実にこの点にあると断言できると思います。
まとめ
所得格差の拡大がもっぱら高齢化に起因するものであるなら、1年も公表を遅らせる必要はなかったはずです。
社会保険料アップと給付金ダウンは高齢層における格差拡大に寄与する部分があると思われます。ただし、高齢層における所得再分配は高額所得者との比較ではなくて、給付金ダウンの下限の議論にすべきではないかと個人的には思いますが。
社会的な問題としては、若年層における格差拡大で、ここでは定量的に検証しませんでしたが、いずれ研究を公表する人が現われるでしょう。一生に渡って効いてくることを考えると、格差の拡大を放置するのは将来に禍根を残しかねません。
この格差を是正するには社会保障ではなく税による再分配効果が重要ですが、この効果はむしろ低下しているのが現状です。政府要人が今まで繰り返し発言してきたのは、所得格差はあって当たり前、能力のある人やしっかり働いた人がたくさんの収入を得て何処が悪い、ということですから、このまましばらく今の状況は続くと思われます。
日本には公正な競争という価値観が根付いていません。競争回避の風土と、その逆にひとたび競走を始めたら、法律もモラルも無い勝てば官軍ルール。こういう社会で競争至上主義を進めると置いてけぼりになるものがたくさん出てきます。過労死や過労自殺などもその一つでしょうし、精神異常者も増加し、それに由来する凶悪犯罪も増加することでしょう。
人の上に立つ人々が事の重大さに気付かないまま、社会はどんどん壊れていきつつあります。
この記事にお便りを。

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